青い教室

「中学生」

 

他人には無い何かになりたい。

でも、薄々自分はその他大勢の人間だと気づき始める時期。

 

自意識の世界。

 

そんな青い時期が僕にもありました。

 

 

狭く、小さい教室で自分を肯定できる要素はないか。

 

必死に探しました。

 

そこで見つけたのが"小説"

 

当時、「山田悠介」

という作家が大ブームでした。

 

「リアル鬼ごっこ」で一世を風靡し、

その後もホラー系の作風と読みやすい文章で

中学生の心を掴んでいました。

 

僕もその心を掴まれた中学生の1人でした。

 

 

しかし、このままでは普通の中学生。

 

そこで、1つ閃いたのです。 

 

 

「村上春樹」の力を頼ろうと。

 

 

村上春樹は、その独特な文章表現でノーベル文学賞候補に何度も名乗りをあげている人気作家。

 

ただ読む人を選ぶ作家でもあり、そこにはセンスが必要でもあります。

 

早速、古本屋で「ノルウェイの森」を購入するも、開始20ページで断念。

 

悔しいが、これが自分の読解力。

 

 

仕方ないので、嘘をつく事にします。

 

 

クラスメイトが山田悠介の話で盛り上がっている中

 

「山田悠介も良いけど俺はやっぱり村上春樹だよね。読後感が素晴らしいんだよ。ファンとしてはノーベル文学賞を期待しちゃうね。」 

 

と見栄を張ります。

 

周りの「おお…凄い…」という視線を感じます。

 

 

これが何かを持つ者が浴びる視線か…。

 

 

悦に浸っていましたが、その快感も一瞬で終わりを迎えます。

 

「えっ!村上春樹好きなの?

 私も好き!一緒に語ろ!」

 

本物の村上春樹に見つかってしまったのです。

 

その後、あたふたしてしまい嘘がバレた僕は見栄を張るのをやめました。